SCM(Supply Chain Management)について調べていたときに、ある本で紹介されていた小説である。15年ほど前に米国で出版されたもので、250万部以上売れているベストセラーでありながら、著者が「日本人は部分最適化に長けている。この本を読んで全体最適化のことを学んだら、日本が世界を支配してしまう」と言ったとか言わないとかで翻訳許可がでなかったそうだ。あとがきを読むと簡単に翻訳許可が得られたように書いてあるので、十分時間が経ったのでもはや日本は敵ではないと判断したのだろうか。
本のタイトルにもなっている「ゴール(Goal)」は、「目標」と訳されているが、「目的」の方がしっくりするような気がしながら読んでいた。企業の目的が利潤の追求であることは、明白なので少々不自然な気もしていた。「手段」との違いに焦点をあてるなら、やはり「目的」とした方が良さそうに思う。かといって、英語のプレゼンテーションを聞くと、必ず「Goal」というタイトルのスライドが示されるので、意味的には「目標」が近いのだろう。ここはあえて「ゴール」としておいた方が良かったのかもしれない。
さて、「企業のゴール」が「お金を儲けること」とされていて、それは確かにそうなのだが、所詮お金は手段(あるいは道具)に過ぎないので、論理的には矛盾しているようにも思うが、そんなことは本書の肝ではない。システムとしての組織が巨大になっていくと、本来の目的からはずれたことに懸命になってしまうということが問題なのだ。あるいは、誤った仮定、測定方法、評価基準に基づいて導いた結論が正しいはずがないというあたり。科学ではある仮説を立て、それを深く検証することによって真理を導き出してきた。そういうアプローチが今更ながらに説明されているのは、著者の科学者としての使命感だろうか。
というわけで、SCMの啓蒙書として、厚さの割には1日半ほどで気軽に読めてしまうものなので、一度は読んどいても損はないと思う。
おもしろかったキーフレーズ:
数字や言葉で遊んでるだけじゃないか
自由は飽きるまでは気分がいいものだ
ゴミを入れてもゴミしか出てこない