UNIXというOSは、わからない人には全く何をどうして良いかわからない代物だろう。コンピュータというものはマウスで操作するものだと思っている人たちには、熟練したユーザが、呪文のような文字の塊をを打ちこんで、しゃきしゃきと操作する姿は気味の悪さすら覚えるかもしれない。しかし、それで目の前に積み上げられた問題を解決できるのならそれで良いではないか。むしろ、今日の大半のコンピュータ・ユーザは、決まりきった使い方しかしないのに、スクリプトとかに書いておけば後は何の手間もかからないようなことを、こつこつとクリックしたりドラッグ&ドロップしたりと膨大な手間をかけてやっているのが不思議に思う。そんなルーチンワークを何でコンピュータにやらせないのか、と。でもそれは無理もない話で、市場の大半を占めると言われているOSは、『そういうふうにはできていない』のだから。
本の内容については、まぁそこそこかなという印象だった。それほど期待して読んだわけでもないので、妥当なところだろう。結局、UNIXユーザでない人が読んでも納得(理解)できないのではないだろうか?そうはいっても、「1つのことをうまくやることに専念する」という考え方は強く推したいところだ。自分自身そのことには気がついていなかったのだ。「小さく、シンプルに」と意識しつづけてはいたが、そこまで言いきっても良いものだとは。その他にもいくつかの『定理』を挙げ、その集大成としてMHを引き合いに出しているのが致命的な印象を与える。自分の中では、MHはUNIXのアプリケーションの中でも最も使いにくいものの代名詞といっても良いくらいのものだからだ。
要するにUNIXというものは、そういう理屈めいたものの集大成ではなくて、もっと単純に、使うことが『それが僕には楽しかったから』というだけの単純な理由であって良いと思うのだ。